小室直樹 日本人のための経済原論
小室 直樹
東洋経済新報社
2015-05-29


1.経済学が役に立たないといわれてる

経済学って役にたたないよね。とよく聞く。
大学の教授でも、あれはモデルの世界だから現実には利用できないという人もいた。
ずっと不思議だったのは、そんなに役に立たない経済学が、世界中で研究されていることでした。

今回、「日本人のための経済原論」を読んで、
経済学が役に立たないといわれるのに、なぜ世界中で研究されているのか?
についてよくわかりました。


2.経済学が役に立たないといわれる理由

経済学が役に立たないと言われてしまう理由の一つに、経済モデルがシンプルなので、現実の複雑さを表現できず予測が当たらない。というのがあります。

そうなんです。私もそう思っていました。
直近では、市中にお金を増やせば物価が上がる。だから2%の物価上昇を見込んだのに…全くアテが外れたりなんてことがありました。
純粋な経済行動をとる人間って何だ?とか。。。

あんなに小難しい数式を並べ立てるわりに、ハズレるのでは、役にたたないと揶揄したくもなります。


3.誤解していた

「日本人のための経済原論」では、「経済学は資本主義において成立する。資本主義でない経済では成立するとは限らない。」と書いてあります。

つまり、日本は資本主義経済ではないから、経済学のモデルがうまく機能しないということです。

いやいや、日本は資本主義でしょう。と思うかもしれませんが、本書では、
・淘汰の起こらない市場は自由市場ではない(倒産すべき企業を政府が支えてしまう、護送船団方式等)。
・ 多くの規制が市場を捻じ曲げているので自由市場が機能していない(行政指導という名の介入等)。
・ 企業が目的合理的な経営をしていない(会社は株主のものという原則が通じない)。
・ また、そのような経営を良とする常識が醸成されていない(資本主義の精神を持っていない)。
という理由で、日本は混合経済、鵺経済だと指摘しています。

本書を読むにつれて、自身の誤解に気づくことになりました。

・ 日本が資本主義だと誤解していたこと。
・ そもそも純粋な資本主義はどこの国にも存在しないこと。
・ 経済学のモデルは、それ自体で利用するのではなく、置かれた状況と純粋な資本主義との差分などを加味してアレンジすることで利用に耐えうる仮説になるということ。

現在の状況と純粋な資本主義との差分を考えるといっても、多岐にわたって研究する分野があることは容易に想像できるわけで、そりゃ、世界中で研究されるワっていう話です。


4.経済学の効用

そうは言っても経済学なんて生きる上で関係なくない?と思うかもしれません。
たしかに、経済を学んで給料が上がった、儲かったって話は聞かないんです。

ただ、多くの人が経済学の原理原則を知っていると、関税のかけあいをする政治家を排除したり、仕事が奪われると移民を排斥するような無駄な真似をしないで済むので、もう少し静かな世の中になるのが効用かなぁと思います。

個人的には、会社との関係を考えるときに役に立つと思っています。
経済学を学ぶと、会社は株主のもので、役員は株主の代理、従業員は契約によって労働力を提供しているに過ぎないことがわかります。この構造が腑に落ちると、会社が儲かっても給料は上がらないのは当然だと考えられるようになるし、反対にこちらも必要以上の労働力の提供をしないことに後ろめたさを感じなくなるのです。
つまり、生きる苦しさを低減できるのが効用かなと思います。

そんな感じで、国民としても個人としても経済を学んでも損はないんじゃないかと思う次第です。。。

小室直樹 日本人のための経済原論【電子書籍】[ 小室直樹 ]
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